■ 第10位 スタンダードという名の高級ホテル

 国の内外を問わず、採集地で高級ホテルなんて無用の長物だし、だいいちそういう場所は私の性に合わない。ところが困ったことに、日本から予約の取れるのは、現地の生活水準からはおよそかけ離れたような超高級ホテルばかりだ。そこで仕方なく、いわゆる「飛び込み」で安宿を利用するわけだが、そうは言っても、たまに大都会に宿を取るような場合には何となく心配なので、日本から予約を取っていく。

 

 クアラルンプールでホリデイ・イン・オンザパークに泊まった時のこと。チェック・アウトの時、ホテルでとった朝食代がなぜか請求されないので、当方からわざわざ億劫な英語で申し出た。何か良いことをしたような気分で、気持ちよくホテルを出た。

 この日は一日市内観光をし、夜の便で帰国するため、預けてあった荷物を取りに夕方にホテルへ戻った。すると、なぜか私のザックがチェーンでぐるぐる巻きに縛ってある。何事かと思うとメモが貼ってあって、フロントへ来いとのこと。申し出ると、何と、朝食代を払えと言う。払ったと言うと、今度は何と何と、それならレシートを見せろと言う。そんなもの最初から渡しもしなかったくせに、よくもしゃーしゃーと。この仕打ちには怒り心頭に達したが、事情を説明しようにも腹が立ちすぎて言葉が出ず(本当はまともに英語がしゃべれない)、あっけなく二重払いさせられるハメになった。

 

 朝はいい気分で出たホテルを、今度は最悪の気分で出た。出たところで待っていたのがホテル専属のピカピカのベンツのタクシー。わざわざこんなのに乗りたくもないが、街外れのため流しのタクシーが拾えず、いやがおうでもこれに乗るようにできている。乗ったところが案の定というか、相場の2倍取られて2倍腹が立った。カネ返せぇー。

 蛇足ながら、私が「高級ホテル」あるいは「超高級ホテル」と呼んで目の敵にしている「ホリデイ・イン」クラスのホテルとは、旅行社のパンフなどによれば、一般に「スタンダード」あるいは「エコノミー」と呼ばれているものなので、念のため誤解無きよう。