■ 第2位 19マイルの悲劇

 マレーシアで最もメジャーな採集地と言えば、誰もがキャメロン・ハイランドを挙げるに違いない。そしてそのキャメロンの中でも、最も有名なのが19マイル・ポイントだ。だから初めてマレーシアを訪れた私が、まずは19マイルを目指したのも、至極当然といえば当然だった。

 ところが、そんなメジャーな19マイルなのに、事前の文献あさりではなぜかポイントマップが見つからなかった。ただ分かったことは、麓のタパーの町からキャメロンの中心地タナ・ラタへ至る道に「タパーから○○マイル」という案内標示が所々にあり、「タパーから19マイル」の標示のところが19マイル・ポイントだということ。― 何だ、馬鹿みたいに簡単じゃないか。それだけ分かれば十分だ。

 こうして期待に胸をふくらませ、いざキャメロンへ。いよいよタパーからタクシーに乗り込みタナ・ラタへと向かう。

 ところがである。標示を見逃すまいと窓の外を凝視するが、「タパーから○○マイル」なんていう表示はどこにもありはしない。ただあるのは、「タナ・ラタまで○○キロメートル」という標示だけだ。

 騙された! マレーシアはとっくの昔にメートル法に改められたらしく、案内標示も全部付け替えられていたのである。おまけに、タパーとタナ・ラタ間はとてつもなく長い道のりで、延々50kmにもわたってジャングルが続いている。これではどこが19マイル・ポイントなんだか分かるわけがない。

 こうして私は、憧れの19マイル・ポイントの前を、泣きの涙で素通りするハメになったのだった。手にはあの、サトウキビのステッキがしっかり握りしめられていた。