■ 第5位 I am a Student?

 国際線の機内では行き先の国の入国カードが配られるので、到着までにこれを書く。今時そんなことぐらい誰でも知っている、と言われそうだが、初めのころは結構これに戸惑った。

 最初に「NAME(名前)」、次に「DATE OF BERTH(生年月日)」ときて、次にいきなり「SEX」とくる。これは当然「性別」を聞いているものであって、「週1回」とか答えるべきものではない。

 そして、次に意外に困るのが、「OCUPATION(職業)」― これだ。人様に言えないような職業の人は別として、普通は自分の職業が答えられないはずはないわけだが、これを英語で答えよと言われると途端に困る。例えば「会社員」、これを英語で何と言うか。和英辞典を引くと「A MEMBER OF CORPOLATION」。こんな狭い欄に、こんなごっついことを本当に書くのだろうか? とはいえ「サラリーマン」や「OL」は和製英語だからダメだ。なんてことでいちいち頭を悩ませるのもアホらしいので、「TEACHER(教師)」でも「CLARK(店員)」でも知っている単語を書いておけばこと足りる。面倒なら「NON(無職)」でも何でもいいわけだ。

 ここで私はふと気になって、見るともなく隣のH氏の入国カードを見てしまった。するとどうだ。驚いたことに「STUDENT(学生)」と書かれていた。

― あのね、なんぼなんでも、それはないんちゃうの? よう歳を考えてや。

 何でもいいとは言うものの、一応つじつまだけは合わせておいて欲しいと思うのが人情である。それにしてもH氏の、こういう物事にこだわらないと言うかなんと言うか、妙にさばけた人柄が、私は好きだ。