2019年採集日記(上)


■ 4月6日(土) 備後地方のギフ(パート1)

かつて自力で見つけた福山市の有名ポイント。
かつて自力で見つけた福山市の有名ポイント。

 自力で見つけたポイントが、自分が知らないだけで実は有名ポイントだったということがある。このポイントがその典型で、14年前に最初に見つけたとき、ボロばかりだが数は多かった。採集者は他に一人だけだったので、秘密の好ポイントを見つけたと思って色めき立った。

 ところが、翌年楽しみに再訪したら採集者だらけ。要は前の年は時期が遅かったので人がいなかっただけだった。

 今回、久々に訪れた当地は、元々心細かった林道が先に進むにつれてひどく荒れていて、軽トラもビビる「地獄の細道」と化していた。そのことに気付いたときには時すでに遅く、転回する場所がないので無理やり突き当りの広場まで突き進んだ。

 やれやれ無事でよかった。でも、帰りにもう一度「地獄の細道」を通らなければいけない‥。

 さて、久々のポイントに先客は一人だけ。記憶によれば3-4人分ぐらいのキャパはあったはずなので、少し奥へ行った場所に雅恵を待たせて私はさらに先へと進む。天気も上々で、朝方は冷え込んだもののしばらくすれば鮮度の良いギフが次々に上がってくるはずだった。

 ところが、待てど暮らせど歩き回れどいっこうにギフは現れない。雅恵はすでに退屈して読書タイムを決め込んでいる。そういえば全体的に林が深くなって日あたりが悪くなった気がする。カンアオイが自生している北西斜面のヒノキ林は明らかに暗くなった。

 11時まで粘って遂にギブアップ。この時点で私は見てもいなかったが、先客は3♂採集していたので粘れば少しは採れるのではないかという迷いもあった。それに、焦って転戦して「地獄の細道」で脱輪でもしようものなら今日一日が無残に終わってしまう。それぐらいならこのままこの場所で粘って、今日の採集を終えてから脱輪したほうが少しはマシかも‥? なんて、うだうだ迷った挙句に即転戦することにして、何とか「地獄の細道」を無事脱出した。

 この後に転戦した先も14年前に見つけた場所で、そのときは3♂採集したものの流れ弾のような印象だったので、今回はあまり期待していなかった。

  それがどうだ、着くなり雅恵と1♂ずつ採集し、その後もまずまず快調だった。例によって午後のギフはブッシュの中を飛んだり高い場所へ上がってしまったり突然目の前に現れたりと、見る割りには採れなかったが、それでも十分満足できた。

[記録]2019年4月6日(土) 同行者 雅恵

広島県福山市柞磨(1) ギフ null

広島県福山市柞磨(2) ギフ 8♂(内3♂雅恵採集)  

 


■ 4月7日(日) 備後地方のギフ(パート2)

 道の駅で朝目覚めると前日に続いて冷え込みがきつい。この日は「曇り後雨」の予報で日照はあっても朝のうちだけなので、朝の冷え込みがきついと勝負にならない。しかし思いのほかよく晴れているので、天気予報を確認すると予報が好転していた。

 こうなると欲が出る。この日は来年のために何か所か下見をして昼には帰るつもりだったのが、結局、昨日二人で8♂採った同じポイントへ舞い戻ってしまった。

ビークマーク(鳥食われ)。
ビークマーク(鳥食われ)。

 見る数は前日と同じぐらいだが、午前中のギフは振り逃がしが少ないのでむしろ成果が上がる。

 しかし前日の午後は軽いビークマーク個体がいたほかは鮮度抜群だったのに、一夜明けたらやけにカケやらキズが目立つのはどうしたことか。中には写真のようなボロッカスまでいて、こいつら夜中じゅう飛んでいたのか? なんて思ったりした。多分前日は午後2時には全く見なくなったので撤収してしまったが、思い切り天気が良かったので、麓に下って遅くまで活動していたに違いない。

 実はこの前年、久々の備後遠征を計画していたのに、直前になって時期が微妙にズレている気がして取りやめた。後になって沢山採れたと知って後悔した。行けばよかった‥。

 だから今年は絶対行くつもりだったのに、直前になって今度は天気予報が思わしくない。遠路はるばる広島まで行って、晴れるのは土曜だけで日曜は雨の予報。またまた迷ったが、行かずに後悔するぐらいなら「行って後悔しよう!」と思い直して決行したのが吉と出た。そこでいつもの決めゼリフ。

「やっぱ、行かな採れませんわ!」

[記録]2019年4月7日(日) 同行者 雅恵

広島県福山市柞磨(2) ギフ 13♂(内3♂雅恵採集) 

 


■ 4月13日(土) 岐阜県白川町のギフ

倒木上の交尾個体(雅恵がiPadで撮影)。
倒木上の交尾個体(雅恵がiPadで撮影)。

 当地は前年4月8日の雪の降る日の下見で見つけたポイント。4日後の12日に再訪したときには桜はちょうど散りはて、ミツバツツジ満開、ギフは遅めで♂は傷んだ個体が多かったが、その割りになぜか♀は少なかった。

 この日は桜は五分咲き、ミツバツツジはまだほとんど咲いていない。季節感としては昨年よりも1週間以上早いと感じた。

 だから当然のことギフは思ったほど多くなく、雅恵が交尾個体を見つけたとはいえ♂はまだ出切っていなかったと思われる。翌14日(日)が雨だったので、15日(月)か16日(火)あたりが適期だったかもしれない。

[記録]2019年4月13日(土) 同行者 雅恵

岐阜県加茂郡白川町某所 ギフ 22♂(内10♂雅恵採集) 

 


■ 4月18日(木)- 21日(日) マレーシア・クアンタン

マレーシア(半島部)。
マレーシア(半島部)。

 10連休という史上最長のGWを直後に控えて、勤勉なる日本国民の皆さまが一生懸命働いているこの時期に、休暇を取って6泊6日(現地4日)でマレーシアへ行ってきた。

 えっ? もちろんGWは10連休をいただきますけど、それが何か?

 という訳で、場所はマレー半島東海岸の都市クアンタン近郊。当地は13年ぶり4回目で、最大の目的はダンフォルディーフタオとの再会である。

 ダンフォルディーは、結果から言うと、よもやの「棄権負け」。ポイント目前の急登を前に断念して帰った。そんなに険しい山奥かというと、さに非らず。私が根性無しかというと、まあそういうことのようで。体調を崩していて、無理するとぶっ倒れそうだったので「勇気ある撤退」をした(←単なる負け惜しみ)。

 現地4日間の日程で、2日目の午前中に早くもダウン。現地は連日猛烈に暑く、この時期身体が暑さに慣れていないのに初日から張り切りすぎたのが失敗だった。2日目も頑張るつもりで朝食を多めにとったのも裏目に出た。重たい腹で朝から急な山道を少し登ったところで熱中症のような症状が出て、スポーツドリンクを飲んで木陰で横になっていたら、そのまま胃がダウン。胃が休眠を決め込んで全く動こうとしないのだ。

 それから3日間まともな食事がとれず、日中はクーラーの利いたホテルで休み、午前と夕方のいくぶん涼しい時間帯にチョロッと出かけてそのたびにダウンするという屈辱的な3日間となった。そして何より、雅恵には心配と迷惑をかけた。

ダスキールトン(シロマブタザル)。
ダスキールトン(シロマブタザル)。
こんな茶髪とは知らなんだ。
こんな茶髪とは知らなんだ。

 そんな話では面白くもなんともないので、現地で見かけたダスキールトンの写真を貼っておく。

 ダスキールトンは目の周りに白い縁取りのある愛らしいサルだが、何しろ高い木の上にいるのでなかなか顔が分からない。思いっ切りズームでたくさん写真を撮って、かろうじて1枚だけ白いまぶたが写っていた。目元の愛らしさばかりが注目されるが、実はこんなお洒落な茶髪?ということは初めて知った。すぐ脇をハイウェイが通る騒々しい森で暮らしていた。

今回使ったレンタカー。後方の樹林にアロパラが多い。
今回使ったレンタカー。後方の樹林にアロパラが多い。

 いつもはタクシーを利用する私だが、今回は久しぶりにレンタカーを使った。マレーシアの国産車プロトン・プレヴェ 1600cc 4ドアセダンは、車自体は満足度5★だったが、やはりレンタカー利用は少し無理がある。

 マレーシアは近年道路交通網などのインフラ整備が著しく進んでおり、だから大丈夫だろうと思ったのが間違い。クアンタンは中小都市とはいえ周辺をハイウェイがのたうちまわるように走っており、片側3車線とか立体交差とかがそこらじゅうにある。ジャンクションでは右方面へ行きたい場合、逆に左へ大きく270度転回して立体交差で右へ行く、なんてことが頻繁に起こる。いくら地図が頭に入っていて方向感覚に自信があっても、ナビがないとどうにもならない。

 ところが、レンタカーと一緒に借りたナビ(現地では“GPS”と呼ぶ)がまるで使い物にならない玩具(おもちゃ)のような代物で、結局のところ雅恵のiPadのGoogleナビで何とかしのいだ。いつも家では車載のナビしか使わないので、急に慣れないアプリで知らない海外で、いきなり「『タマン・ペルタニアン』で検索してよ」なんて言われて雅恵もパニクりそうだったと思う。でも良くやってくれた。

[記録]2019年4月18日(木)-21日(日) 同行者 雅恵

マレーシア・クアンタン郊外 

アラコニアムラサキシジミ 1♂ ユーモルフスムラサキシジミ 1♂ 等 4日間で78頭採集。