夢のヘロン島は夢となり‥ (パート3)


■ ケアンズのホテル -コンドミニアム初体験-

インケアンズの写真
イン ケアンズ(今回泊まったホテル)

グリーン島からケアンズへ戻ったその日は大晦日で、夜9時とカウントダウンの12時にトリニティー湾で打ち上げ花火があり、ホテルの3階の部屋のベランダからよく見えた。

今回泊まったホテルは右の写真のとおり「コンドミニアム」と呼ばれるタイプのもので、ホテルというより貸しアパートと理解したほうが近いかもしれない。実際、オーストラリアではコンドミニアムのことをアパートメントと呼んでいるらしい。

インケアンズの入口の写真
イン ケアンズ 入口

入口を見ればホテルでないことは一目瞭然。ドアの向こうにいちおうフロントがあるが、「フロント」というより「デスク」「事務所」という感じ。そのフロントも夜8時で閉まってしまい、それ以降入口のドアにはロックがかかる。

最初の晩はたまたま他のゲストが出入りするところと一緒になったので良かったが、2日目の晩に事件は起きた。夕食から帰ったら入口に鍵がかかっていて、右側の壁にあるインタホンを押したら「せっかくお越しいただきましたが、本日の業務は終了しました…」的な録音が流れた。インタホンの上のプレートには「午後9時以降の来訪お断り」のようなことが書かれている。時計を見ると9時5分。「しまった、締め出された」と一瞬青ざめる。まさかこんなところで野宿か?!

とその時、インタホンの横に鍵穴があることに雅恵が気づき、ルームキーを差し込むとロックが解除できた。いくらなんでもお嬢様学校の女子寮じゃあるまいし、9時が門限ってことはなかった。

インケアンズの室内の写真
イン ケアンズの室内

右の写真は室内の様子。ベッドルームとLDKに分かれており、つまりリビングには写真のようにキッチンがある。キッチンには中型の冷蔵庫と電子レンジ、ガスコンロ、それに鍋、皿、ナイフ、フォークの類が揃っている。また、バスルームには全自動洗濯機と乾燥機もある。

逆にホテルにあってコンドミニアムにないのは、前述のようにフロントが24時間ではないのと、部屋の掃除をしてくれない。ベッドメーキングなんかどうでもよいが、タオルを取り替えてくれないのは困る場合がある。私のように2-3日同じタオルで平気な輩は問題ないが、雅恵は潔癖症なので毎日新しいタオルでないと嫌らしい。すると、到着したその日の晩にいきなり洗濯をしないと翌日のバスタオルがないことになる。夜遅くにチェックインした時などは大変と思う。(イン ケアンズの場合、フロントが開いている午後8時までしかチェックインできないかもしれない。)

要するにコンドミニアムの場合、過剰なサ-ビスはない代わりに設備が整っているので、自分たちでやればいい人には快適で、私たちの旅のスタイルにも合っているようにも思えた。ただし、イン ケアンズはやや老朽化しているせいか売りであるはずの設備面に少し問題があった。初めにあてがわれた部屋はエアコンが壊れていたため別の部屋に変えてもらった(おかげで1階から3階になってベランダから花火が見えた。ラッキー! )。代わった次の部屋はバスルームのシャワーとカランの切り替えが壊れていて、常に両方からお湯が出た。洗濯機はえも言われぬヤバげな音を発し、いつ壊れるかとハラハラさせられた。電子レンジはなぜかロックがかかっていて解除できなかった。

もっとも、こんな程度の不具合は、いつも我々が利用しているマレーシアの3ツ星クラスのホテルでは日常茶飯事なので慣れっこだが、値段がだいぶ高めだった分、少し文句を書きたくなった。

 

■ ケアンズの街にて

レイクストリートの写真
レイク ストリート

写真はホテルの前の大通り。ご覧のとおり路駐している車は大変多いが、なぜかろくに走っていない。そしてもっと驚きは、写っているのは片側の一車線で、写真の右側に反対車線がある。つまり写真右側に写っている車は道路の端に駐車しているのではなくって、中央分離帯上に駐車スペースがあるのだ。

さて、ここに車を停めた人はどうやって道路を横断するかというと、当然のように横断歩道のない道の真ん中を渡ることになる。日本の道路交通法でも「横断歩道の付近では横断歩道を渡れ」ということが定められていて、逆に言えば「横断歩道のないところでは道路の真ん中を渡ってもいいよ」という解釈にはなるが、そういうことを社会的に助長するような都市の構造に、実におうようなものを感じてこういうの大好きだ。

 

朝食の写真
ちょっとリッチな朝食

ケアンズはそこらじゅうにカフェのようなものがあって、朝食、昼食には困らない。テーブル中央のかわいらしいカフェラテの向こうに、飲みかけのような小さめのカップがあるのにお気づきだろうか。拡大したのが下の写真。

エスプレッソの写真
エスプレッソ

これは飲みかけでも飲み残しでもなく、エスプレッソを注文したらこの状態で出てきた。カップはデミタスカップである。そもそもコーヒーというメニューがなくて、あるのはエスプレッソ、カプチーノ、カフェラテの3種類だけ。恐る恐る舐めてみると、ドロっと煮詰まったスーパーウルトラ濃いーものがカップの底に2cmほど沈んでいる感じで、およそ飲み物とは言い難い代物だった。お湯で割れば少しはマシか? 思わず「ホット ウォーター プリーズ」と叫びたい衝動に駆られたが、「日本人って変!」と思われるとまずいのでやめた。「オーストラリア人って変!」

 

リーフカジノの写真
リーフ カジノ

前回来た時からこの建物が気になっていた。

どうやらカジノらしいと分かったが、どうしてカジノがこんな形をしているのだろう。カジノだけに、イカサマをやってないことの証しとしてガラス張りか? 

ではなくって、カジノの入っているビルの屋上にミニ動物園があると知った。動物好きのうえに動物園好きの私としては、ホテルから徒歩10分のところに動物園があるのに行かないという選択肢はなかった。

コアラの写真
コアラ

コアラが手の届きそうなほど近くで、一心不乱にユーカリを食べていた。地元名古屋の東山動物園ではなぜだかコアラ舎はいつも長蛇の列で、その列に並んでやっとコアラの前にたどりついてもトコロ天式にすぐ押し出されてしまう。しかもガラス越しの部屋の向こうのほうの木の上でじっとしているだけなので、面白くもなんともない。(なのに人気があるのはなぜだ?)

その点、ここのコアラは、話しかければ意外に大きなその耳をピクッと動かしてくれそうなほどの至近距離にいた(実際にはずっと背中で無視し続けてくれたけれど…)。

 

屋上のミニ動物園なので、どうせ大したことはないだろうと最初っから期待していなかったけれど、コアラのほかは本当に大したことなくてガッカリした。入場料だけは大したことあって、大人A$22(約2,300円)。このチケットで向こう1週間入場できるとか言われたけれど、「もう来ねえよ」と心の中でつぶやいて帰った。

 

■ ケアンズ最後の日・最後のトラブル

ケアンズ最後の日は元日。最後の最後にまたしてもトラブルが待ち受けていようとは…。 今回の旅はゆっくりのんびりするどころか、毎朝アラームに起こされ、オプショナルツアーのスケジュールに追われて常に時間を気にする毎日になってしまった。帰りのフライトは夕方5時過ぎだし、国内線だし空港は街から近いし、3時過ぎにタクシーに乗れば十分だ。最後の日ぐらい一日ゆっくり街ぶらしよう。トリニティ湾には世界最大の野生のペリカンがいるのでこいつに会いに行き、愛嬌者のペリカンとゆっくり話でもしてこよう。 朝ゆっくり起きてまずはパッキングを済ませ、チェックアウトしてフロントにスーツケースを預け、それから遅めの朝食をとり…。そんなつもりで9時過ぎにフロントに降りた。チェックアウトして荷物を預けようとすると、今日はニューイヤーだからフロントは正午でクローズドだと言う。 オー マイ ゴッ! どうしよう。これから朝食をとると正午までは実質2時間しかなく、逆に正午に荷物をピックアプしてから飛行機の時間までは5時間もある。ホテルならフロントは24時間だが、コンドミニアムにしたばっかりに最後の最後にこんなことになってしまった。

とりあえずフロントに荷物を預けて、隣のカフェで朝食をとりながらあれこれ考えた。ATSのツアーデスクへ行って預かってもらおうか。ダメだ。元日は休みだと言っていた。空港まで行けば手荷物預かりでスーツケースを預けられないか。それから街へ戻っても1時間ちょっとのロスで済むだろう。今日こそはゆっくりのんびりするつもりでさっきまで完全休日モードだったのに、急に頭の中で時計の針がぐるぐる回り始めていた。

買い物から帰ってきたところの写真
“ I'm old enough.(初めてのおつかい)”

結局これといった知恵も浮かびそうになかったし、ゆっくりするための算段であくせくするのがバカバカしくなってきたので、とりあえず正午までは前述のミニ動物園でゆっくり時間をつぶすことにした。

正午に荷物をピックアップし、今度は近くのオープンカフェでゆっくりゆっくり昼食。雅恵が買い足したい土産を思いついたと言うので、私がテーブルで荷物の番をしている間に雅恵一人で買い物に行く。これまで常に二人で行動し、買い物の時はいつも私が支払いをしてきた。初めて手にするオーストラリアドルで、一人でちゃんと買えるだろうか。少し心配していたが、「初めてのおつかい」よろしく、無事買い物を終えて得意満面で戻ってきたのには思わず笑った。

それにしても、いつまでもこうして粘っているわけにもいかないので、まだ3時間半もあるけれどそろそろ空港へ行くとするか。

こうして4泊5日の「いきなりですが、ケアンズの旅」も終わりを告げる。幸いにも滞在中ずっと天気に恵まれ、連日の快晴。本当はこの時期のケアンズは雨季の始めに当たり、5日間も好天が続くこと自体普通ありえないのかもしれない。実際私たちが到着する前日まではすっきりしない天気だったらしい。きっと天の神様が私たちに同情してくれたのだろう。

 

■ 幸福のメール

この紀行文を間もなく書き終えようとしていたところへ、ATS(オーストラリアツアースペシャリスト)のK原さんからのメールが舞い込んだ。これまで「不幸の電話」などと失礼な言い方をしてしまったが、今度は思いもよらぬ「幸福のメール」である。火災を出したヘロン島のリゾートから、お詫びの意味での「ヘロン島無料招待」のお知らせだった。内容は3泊4日の宿泊(三食付)プラス往復のフェリーで、金額にすればざっと18万円ほどのプレゼント。期限も来年2015年1月31日までの1年間で、都合の良い日程で申し込めるという。

突然のサプライズに、雅恵は例の調子でもうすっかりその気になって舞い上がっている。オーストラリアまでの往復旅費30万円はいったい誰が払うのかな? と、言ってはみても、このストーリー展開ではもう行くしかないような気がしてきた。今年は夏休みを利用して、昨年3月以来積み残しの宿題がたくさんあるボルネオのクチンへ行こうかと考えていた矢先、ヘロン島が現実になると、今度はクチンが夢となって遠ざかっていく…。

結婚10周年記念で初めて行ったケアンズが、あまりに気に入ってなぜか翌年もう一回行ってしまった。結婚25周年で行ったはずの今回、もしこれでまたもう一回行くことになったら、何のための10周年、25周年だか訳が分からん。とはいえ、オーストラリアと私はそういう因縁なのかもしれない。

というわけで、これにて「完」のはずが、もしかすると「来年につづく」かな?